CH134

◆第134回 人文科学とコンピュータ研究発表会

主査: 橋本雄太(国立歴史民俗博物館)
幹事: 耒代誠仁(桜美林大学)、小川潤(ROIS-CODH)、鈴木親彦(群馬県立女子大学)、吉賀夏子(大阪大学)

情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会(IPSJ SIG Computers and the Humanities)では、下記の通り第134回研究会発表会の開催を予定しております。歴史、地理、芸術、民俗、文学、言語、社会などなど、様々な人文科学の諸領域での情報資源の記録、蓄積、分析、提供や応用に関わる研究発表をお考えの方はぜひ奮ってご応募ください。

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 日時 2024年2月17日(土)
 会場 会場 オンライン開催(オンラインのみ)
 発表申込締切 2024年1月11日(木) 1月18日(木)まで延長
 原稿提出締切 2024年1月25日(木)
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1. 情報処理学会のマイページ(リンク)から参加申込みをお願いします。(研究会開催日の10日前頃から参加申し込みリンクが設置されます。)

※今回は一般口頭発表のみの募集と致します。

参加費

研究会登録会員無料
学会正会員2750円
学会会員学生1100円
学会非会員学生1650円
非会員3850円

参加費詳細はこちら
参加申込みはこちら
【補足】 研究会への参加申し込みは、通常研究会開催10日前から研究会当日まで情報処理学会の「マイページ」で受け付けています。各自でご登録よろしくおねがいします。

発表要領

プログラム

2024年2月17日(土)

 10:30-10:40

開会挨拶

 10:40-12:00

セッション1

 10:40-11:00

(1) 背景史と感情の因子分析に基づく背景史の役割の解明

○坂本珠凜(公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科)・村井源(公立はこだて未来大学システム情報科学部複雑系知能学科)

物語の登場人物には物語本編より過去の時系列の物語が設定され,その開示によって読者や他の登場人物に同一化や共感を促すことが多々ある.本研究では登場人物が持つ物語本編より過去の時系列の物語を背景史と定義し,作品間の背景史と感情の関係性の解明のため,χ二乗検定と残差分析による背景史の出現頻度の比較分析を実施した.また,物語における背景史の役割の解明のため,背景史と感情の因子分析によって8種類の因子を抽出した.因子分析の結果から,登場人物の精神状態や行動選択に影響を与える要因として,不幸やすれ違いがもたらした悲劇的な背景史などの複数のパターンが明らかになった.

 11:00-11:20

(2) 古文書保管と活用に関する所蔵者の意識と地域機構の取り組み

○吉田知加(文教大学)・西川和(文教大学)

日本では,江戸時代もしくはそれ以前の古文書を,主として地域機構(文書館など)が保管しているが,所蔵者が自宅に保管している事例が珍しくない.本研究では地域機構が実施した古文書所蔵者である新潟県旧家田中家(仮名)の古文書の所在確認調査を通じて,所蔵者の古文書に対する意識と地域機構の保管活用を目指す取り組みの経緯をGTA (Modified Grounded Theory Approach)により確認する.分析により,史料の登録を推進するためのデジタル化を含む施策を議論する.

 11:20-11:40

(3) 宮島達夫他編『古典分類語彙表』データの構造化及びその応用

○于拙(大阪大学大学院人文学研究科)

多くの日本語学者の努力によって、日本語の意味研究の基礎資料である現代語版『分類語彙表』や古典語版『古典分類語彙表』が作成されてきた。本研究では、まず『古典分類語彙表』のデータを構造化し公開することで、その更新、拡張や連携を容易にした。また、その応用を広めるべく、現代語版『分類語彙表』やコーパス等との連携法を示しつつ、検索用インタフェースを構築し公開した。

 11:40-12:00

(4) 「泣ける」と評価される物語の因果関係に基づく構造分析と登場人物の感情状態

○福元隆希(公立はこだて未来大学大学)・村井源(公立はこだて未来大学)

動物が流す3種類の涙のなかでも,人間のみが流すとされる情動の涙について,心理学や認知科学,生理学,脳科学といった様々な観点から研究が実施されてきた.また最近では,人気のある物語作品に対して,ユーザーの涙を促すという意味で「泣ける」と評価される場合がある.近年,様々なジャンルの物語作品について横断的に構造分析を実施することで各ジャンルの特徴を調査する試みが行われている.さらに,ジャンルという括りではなく「泣ける」という評価を軸に物語に着目し,構造分析を実施した例がいくつか存在する.しかし,「泣ける」と評価される物語作品において,ユーザーの涙を促すと考えられるシーンと他のシーンとの関係性を調査した例は見受けられない.そこで本研究では,ユーザーの涙を促すと考えられるシーンの要素について描写している他のシーンに着目し,描写している内容についてカテゴリを作成した.さらに,描写している内容と物語機能の関係を抽出した.加えて,「泣ける」と評価される物語における登場人物の感情状態について構造分析を実施した.ユーザーの涙を促すと考えられるシーンでは他のシーンよりも表現される感情の数が多くなる傾向が存在することが明らかとなった.

 12:00-13:30

休憩

 13:30-14:35

セッション2

 13:30-13:50

(5) フォトグラメトリによる世界遺産萩・韮山反射炉の形状比較および創建時外観の仮想復元

○浦祐奨(福岡大学工学部電子情報工学科小野研究室)・小野晋太郎(福岡大学工学部電子情報工学科小野研究室)・栗達(福岡大学工学部電子情報工学科小野研究室)

萩反射炉、韮山反射炉は、国内に現存するただ2つの貴重な近世の反射炉遺構であり、世界遺産(九州・山口の近代化産業遺産群)にも登録されている。これらはいずれも佐賀藩から技術供与を受けており、類似した構造を持つ可能性がある。本研究では、写真測量によりこれらの三次元形状を復元し、形状を比較した。また、現在の韮山反射炉に見られる鉄骨等は、明治末期および戦後の補修において補強のために追加されたものであり、竣工当時には存在しないものである。これらの鉄骨の三次元点群を抽出・除去し、補間することにより、竣工当時に近いと考えられる外観の再現を試みた。

 13:50-14:10

(6) ネット掲示板発言小町のLDAによるトピック分析

○川口裕靖(立教大学大学院人工知能科学研究科)・大西立顕(立教大学大学院人工知能科学研究科)

読売新聞が運営する掲示板サイト「発言小町」におけるユーザー投稿のトピックを分析した。発言小町は恋愛、子育て、仕事の悩みや家族の話題など身近な内容が匿名で投稿されるプラットフォームである。潜在ディリクレ配分(LDA)を用いて、投稿データを21のトピックに分類し、その時系列変化を観察した。コロナの流行期や年末年始に増減するトピックの存在を確認した。この研究は、オンラインコミュニティのダイナミクスを理解し、ネット掲示板データの活用方法を探る視点を提供する。

 14:10-14:35

(7) ダークファンタジーとファンタジーにおける物語構造とダーク性の比較

○金刺智哉(公立はこだて未来大学)・村井源(公立はこだて未来大学)

文学において, ファンタジーとダークファンタジーは異なるジャンルとして認識されている. だが, その境界線は曖昧であり, これらのジャンルを正確に区別する事が難しいという問題がある. そこで本研究では, ファンタジー作品4作品を対象とし, ダークファンタジー作品との差異を明らかにすることを目的として分析を行った. 具体的には, 物語中でダーク性の原因と考えられる要素のカテゴリを作成し,対象作品中でのこれらの要素の出現頻度を調査した.また, 合わせて物語構造分析を実施し,物語パターンとダーク性カテゴリ中の要素の共起関係を分析比較した. 結果として,ダーク性カテゴリの各項目の頻度や出現シーンの比率に差異があることが明らかになった.また, 共起ネットワーク分析からも中心性の高い要素が,ダークファンタジーでは暴力や社会による抑圧であることが明らかになった. また,殺人と精神・身体の欠損が共通して高いことが明らかになった.

 14:35-14:45

休憩

 14:45-15:55

セッション3

 14:45-15:10

(8) MIDIピアノを用いたピアノコンクールの合格者と不合格者の演奏における拍間隔変化の比較

○高橋舞(東京大学/ピティナ音楽研究所)・小林未知数(高知工科大学)・中村栄太(京都大学)・大向一輝(東京大学)

MIDIデータ取得機能を持つピアノを用いて、2023年に開催されたブルグミュラーコンクールの参加者の演奏をMIDIデータとして取得した。MIDIデータには、打鍵・離鍵のタイミング、打鍵速度、ペダルの踏み込みの深さが記録される。この情報をもとに、コンクールにおける複数の審査員による評価の結果としての合格・不合格の基準と、各コンテスタントによる演奏の拍間隔変化にどのような結び付きがあるのか、解析を試みた。

 15:10-15:30

(9) MTMineRを用いたラテン語碑文のワード分析試論

○丸山瑞貴(名古屋大学大学院人文学研究科)

西洋古代史研究において,デジタル・ヒューマニティーズ(DH)はデジタル校訂やインターネット上でのデータの共有という分野で広く活用されている.しかし,テキストマイニングなどの研究手法は,日本の西洋古代史分野では浸透していない.そこで,本発表では,テキストマイニングツールMTMineRを用いた碑文のワード分析の手法を提案する.その一例として,ローマ帝政期トリポリタニアの顕彰碑文を時代ごとに数グループに分け,時代によってその内容に変化がみられるか考察する.

 15:30-15:55

(10) TEI古典籍ビューワによる構造化テキストの可視化

○永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)・本間淳(フェリックス・スタイル)・佐久間祐惟(東京大学大学院)・幾浦裕之(国文学研究資料館)・佐久間祐惟(東京大学大学院)・王雯璐(東京大学東京カレッジ)

TEI/XMLに準拠したテキストデータの構造化は、人文学研究者が必要とする多くの構造を記述可能である。しかし、XMLタグと属性を用いて記述されたデータは、複雑になればなるほど、それがどのように見えるのかを確認することも、テキスト内の要素がどのような関係にあるかを知ることも難しくなっていく。プログラミングができる研究者には問題にならないことだが、人文学研究者の多くはプログラミングに不得手であり、また、そうでなくともいちいちプログラミングをしなければ情報を得られないデータというのは使い勝手がよくない。それを解決するためのビューワも存在するが、日本や東アジア古典籍のためのものは十分に整備されてきていなかった。そのため、筆者らのプロジェクトでは、この課題を解決するために、簡易に利用可能なTEI古典籍ビューワを開発した。本発表では、その詳細と用例、課題について報告する。

 15:55-16:20

閉会

お問い合わせ先

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