CH126

◆第126回 人文科学とコンピュータ研究会発表会

主査: 耒代誠仁
幹事: 鹿内菜穂、中村覚、西岡千文、橋本雄太

※重要・ご注意※
第126回研究会は、新型コロナウイルスの影響に鑑み、オンラインで実施することにいたしました。

情報処理学会人文科学とコンピュータ研究会(IPSJ SIG Computers and the Humanities)では、下記の通り第126回研究会発表会の開催を予定しております。歴史、地理、芸術、民俗、文学、言語、社会などなど、様々な人文科学の諸領域での情報資源の記録、蓄積、分析、提供や応用に関わる研究発表をお考えの方はぜひ奮ってご応募ください。

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 日時 2021年5月22日(土)
 会場 オンライン開催
 発表申込締切 2021年4月8日(木)
 原稿提出締切 2021年4月22日(木)
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(1)募集内容

※ポスターセッション/ロング/ショートいずれも2~8pの予稿の提出が必要となります(この範囲であれば枚数は自由です)。
※予稿のフォーマットは情報処理学会のページをご参照ください。

(2)申込方法

プログラム

2021年5月22日(土)

13:00~13:10 開会挨拶

13:10~14:20 セッション1

13:10~13:35 (ロング)
(01)言語情報の前方誤り訂正における書誌学の重要性
○得丸久文(著述業)

 言語のデジタル進化は、音節・文字・ビットという物理層の三段階進化により、消えない音節、対話する音節を獲得したことで複雑化した。それぞれが脳内論理層で言語情報の取り扱い方の最適化を試みた結果、片耳聴覚による文法処理、1対1の反射の論理を1対全の群の論理へと進化させた概念の獲得、極めて大量であるが信頼性の保証のないWeb情報を使った前方誤り訂正が実現した。この前方誤り訂正の、通信路誤り訂正において書誌学が極めて重要な意味を持つ。

13:35~14:00 (ロング)
(02)Digital技術下の方法論は革命的か:歴史学の場合
○望月澪(東京大学大学院人文社会系研究科)

 Digital Humanities (DH) 技術の進展が目覚ましい現代に於いて, 人文学の研究は大きな変革を求められつつある. 即ち, 史料の爆発的拡大であり, 精読, 伝統的な質的文献学的分析の他に, 多読, 統計処理による量的分析という手法論が求められ始めている. このことは人文学, 特に歴史研究にとって何を意味するのか. 幾つかの実例に於いて用いられた, ないしは用いられ得るdigital技術が旧来の歴史学の手法に於いて何を意味しているのかを検討することで, digitalな手法論が歴史学の構造に与え得る変革の意義を検証する. その検討からは, 一見した際にdigital技術が持つと考えられるほどの変革がもたらされるのではなく, 寧ろ旧来の手法論と同列に並べられることが要請されていることが判る.

14:00~14:20 (ショート)
(03)深層学習を用いた石造物の検出と分類
○小池隆(合同会社ミドリアイティ) 

本論文では,石造物研究における深層学習の活用例として,①車載カメラで撮影した動画からの石造物の検出と分類,②画像認識による月待塔オープンデータのデータエンリッチメントについて報告する.

14:20~14:35 休憩

14:35~15:35 学生ポスターセッション
(14:35~14:45 ショートプレゼンテーション)

(04)仏教図像の3次元モデル化に関する検討と実践
○鈴木政宏(東京大学) 

仏教を伝える重要な手段である仏教図像を,3次元モデルを用いて制作,公開するために,先行事例における課題を指摘しつつ,適切な方法を考察した.次にインド密教の主要な菩薩である金剛薩埵を選定し,テキスト上の記述に基づきながら,インド・チベットの作例と比較して,実際に3次元モデルを制作し,インターネット上に公開した.その結果,仏教図像において,3次元モデルの持つ幅広い表現の可能性を示すことができ,加えて,仏画と仏像の間の細部の差異や,それぞれの媒体の特性に起因する表現上の制約を垣間見ることができた.

(05)デジタル楽譜の類型化とデジタル楽譜文化を支えるフォーマットについての考察
○関慎太朗(東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究専攻)

楽譜を機械可読な形式で構造的に記述するための規格整備が進み,紙媒体で共有されてきた楽譜がデジタルメディアに対応したインタラクティブスコアとして再整備されつつある.このような状況を議論する上では,紙からデジタルへの移行を段階的に整理し,その内部で展開されている活動について議論する必要がある.本稿ではデジタル楽譜の類型をそのプロセスおよび楽譜の符号化に向けた進展から再定義するとともに,デジタル時代の楽譜文化を支えるMusicXMLとMusic Encoding Initiativeについて,その設計思想の違いについて検討する.

(06)デジタル時代における多様な資料継承の仕組みを包括する議論モデルの提案
○大月希望(東京大学大学院学際情報学府)
・大向一輝(東京大学大学院人文社会系研究科)
・永崎研宣(一般財団法人人文情報学研究所)
・佐倉統(東京大学大学院情報学環)

現在、博物館、地域における郷土資料の保存、デジタルアーカイブなど、モノや情報を残す仕組みは数多く存在し、その主体や理念、方法は多様化している。しかし、このような質的に異なる仕組みを、既存の枠組みの中で議論することは困難である。本稿では、モノや情報を残す(あるいは残る)多様な仕組みを包括的に議論するための、新しいモデルを提案する。加えて、このモデルを用いて、様々な残し方や残り方の位置付けを比較検討することを試みる。

15:35~15:45 休憩

15:45~16:50 セッション2

15:45~16:05 (ショート)
(07)消滅危機言語の辞書データベースの構築と公開:「鳩間方言 音声語彙データベース」、「うちなーぐち 活用辞典テキストデータベース」の事例報告
○中川奈津子(国立国語研究所)
・加治工真市(沖縄県立芸術大学)
・宮良信詳(琉球大学)

本発表では消滅の危機にある日本の言語の辞書を構築・公開した経緯を報告する。1つ目は八重山諸島の鳩間島(西表島の北に位置する島)で第2著者が約60年にわたって書き留めた鳩間方言(ぱとぅまむに)の辞典(『鳩間方言辞典』)、2つ目は沖縄本島で話されている沖縄語(うちなーぐち)で第3著者が母語話者に確認を取りつつ完成させた沖縄語の用例を集めた辞典(『うちなーぐち活用辞典』)である。Microsoft Wordで作成された非構造化テキストを、第1著者がスクリプト(Python)と手作業でデータベース化し、LaTeX形式に変換して辞書を作成し、テキストデータベース(CCライセンス)とPDF版を公開した。『鳩間方言辞典』に関しては著者による項目読み上げの録音があるため、音声ファイルも関連付けた。またすべての変換スクリプトも公開予定である。 オープンサイエンスを志向し、コミュニティに研究成果を還元するためにすべてをオンラインで公開したが、言語調査の協力者であり理解者であり支持者でもある高齢者には特にアクセスが難しいことが多いため、書籍も印刷・製本し配布した。本発表ではこの事の利点と限界点も論じる。

16:05~16:25 (ショート)
(08)原本玉篇の江戸期写本 - 巻19残巻の錯簡について
○鈴木俊哉(広島大学)

日本に断片が残る原本玉篇は、現在では散逸した典籍の引用も多く、逸文を収集する材料としてのデジタルテキスト化が大きな課題である。広く利用されている古逸叢書本は、多くの部分が江戸期写本を加筆修正した上での模刻と考えられている。この江戸期写本は複数現存するが、それらの参照・派生関係は巻09・27を除き、十分に整理されていない。東方文化叢書のコロタイプ影印では既に失われている部分があるため、江戸期写本から適切なものを選ぶには、この関係の分析が課題である。本稿では巻19水部について、他本と異なる錯簡を持つ島田篁村旧蔵本について報告する。

16:25~16:50 (ロング)
(09)デジタルコーパスを用いたデータ駆動型の間テクスト性研究:古代末期エジプトの二人の修道院長のコプト語書簡におけるコプト語訳聖書からの引用の探知と分析
○宮川創(京都大学大学院文学研究科附属文化遺産学・人文知連携センター)

本研究は,デジタルコーパスを用いたデータ駆動型による間テクスト性研究の一モデルを提示する.筆者らは,4世紀から5世紀にかけて生きた修道院長シェヌーテ,および,5世紀に生きた修道院長ベーサのコプト語による書簡のデジタル学術編集版をTEI XML形式で作成した.そして,TRACERというテクスト・リユース(引用や引喩など)を探知するプログラムを用いて,シェヌーテとベーサの書簡コーパスと,ゲッティンゲン学術アカデミーから提供されたコプト語訳聖書コーパスとを比較・分析した.結果,先行研究では見つけることのできなかった聖書引用を多数発見した.本発表では,このような間テクスト性のデータ駆動型研究の手法とそれによって新しく見つかった聖書引用の特徴を考察する.

16:50~17:05 CH研究会奨励賞受賞者発表等・閉会

お問い合わせ先

ch-madoguchi■jinmoncom.jp(@を■に変更しています )


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