◆第113回 人文科学とコンピュータ研究会発表会

主査: 松村敦
幹事: 亀田尭宙、鹿内菜穂、土山玄、山田太造

会場情報

 日時     2017年 2月4日(土)
 会場     愛知工業大学本山キャンパス(愛知県)
 発表申込締切 2016年12月19日(月) 締め切りました
 原稿提出締切 2017年 1月12日(木)

募集内容

情報技術を活用した人文科学分野の研究、人文科学に関連する情報資源の記録、蓄積、提供に関する研究を幅広く募集しています。

※ロング/ショートでも2p〜8pの予稿は必要となります。  (この範囲であれば枚数は自由です)

申込方法

参加費と参加方法(聴講)

学生一般
SIGCH登録会員無料無料
情報処理学会会員500円1500円
非会員1000円2500円

詳しい情報は下記URLをご覧ください.
http://www.ipsj.or.jp/kenkyukai/sanka.html

プログラム

9:45-9:50
オープニング

9:50-10:15~ ランダムフォレストを用いた文芸テキスト分類と指標の評価 ―Alice Bradley SheldonとErnest Hemingway-
木村 美紀(明治大学大学院文学研究科)

本研究では、ランダムフォレストを用いた文芸テキストの分類を行う。使用するデータセットは文芸批評上比較されることの多いAlice Bradley Sheldon 全72作品とErnest Hemingway の短編小説全69作品である。これら141作品をコーパス言語学の一分野である計量文体論の手法を用いて分析を行っていく。木村 (forthcoming) ではBurrows (1992) に基づいて高頻度語彙上位50語という指標を用いてAlice Bradley SheldonとErnest Hemingwayのテキスト分類を行った結果、92.20%という高い分類正確率を得ることができた。また、多次元尺度法によるテキスト間の類似度の提示やGini係数や部分従属プロット基づく分類に有効であった変数の図示、下川・杉本・後藤 (2013) に基づいた外れ値プロットの図示によってこの2群の差異を提示した。  本研究では、木村 (forthcoming) の変数を変更して分析を行い先行研究の結果が追試可能か検討を行う。Hirst and Feiguina (2007) 、Hou and Jiang (2016) 使用されているような品詞の分布という統語的な指標を追加し分析を進める。語彙を指標として分析を行った木村 (forthcoming) で得られた分類正確率と、統語的な指標を用いて分析を行った結果得られた分類正確率の比較を行い、文芸批評で比較されること多いAlice Bradley Sheldon作品群とErnest Hemingway作品群の計量文体分析における指標の評価を行う。

10:15-10:35
地域研究における論文と史料からの用語文脈の抽出
亀田 尭宙(東南アジア地域研究研究所)

ある地域、ある歴史上のできごとや、宗教的概念を論文や史料群の中から研究者が捉えることを情報技術で支援しようとしたとき、最も基本的なアプローチは検索を可能にすることである。しかし、そこから全体像を描くには、検索結果を逐一確認して検討する必要がある。そこで、対象となる用語の文脈を抽出し分類することで、全体像の把握をも支援することを試みた。本論文では、複数の事例に対して自然言語処理の基礎的な技術を適用しその結果を検討することで、実践的な支援の可能性と課題を探った。

10:35-11:00~ 説文解字篆韻譜に見える説文解字繋傳25巻所収文字の状況
鈴木 俊哉(広島大学)

南唐末に編まれた説文解字繋傳(いわゆる小徐本説文解字)は早くに原形を留めない状況となり、全40巻のうち巻25は未だに大徐本で補ったものしか見つかっていない。糸原は小篆の部首字の字形を分析して清代以降に通行した小徐本の小篆字形は全て張次立により大徐本に近づけるために校訂されている可能性を指摘し、説文解字篆韻譜が小徐本の原形を推定する有力な材料である可能性を示した。 そこで本稿では説文解字篆韻譜の小篆字形をデータベース化し、巻25所収と思われる文字の状況を報告する。データベース化の際の難点についても報告したい。

11:00-11:10
休憩

11:10-11:30~ 郷土食による地域理解支援システム「もちマップ」の試作
河村 郁江(名古屋工業大学大学院工学研究科博士前期過程)

郷土食は,地域の産物を活用した食べ物であり, 郷土食をよく知ることは, 地域の理解や知見につながる. 2013年に和食がユネスコの無形文化遺産に登録され, 近年食に関する関心が高まっているが, 郷土食は地域ごとの解釈が異なることや, 時代による食生活の変化等により, 元々の成り立ちは分かりにくくなっている. 本研究では,郷土食を通じ地域を理解するためのもちマップを試作し郷土食の情報を位置, 属性, および統計情報と共に見ることで地域理解を深める提案をする.

11:30-11:50
日本古典籍データセットを活用した共同翻刻システムとIIIFの可能性
永崎 研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

日本古典籍データセットは,2015 年に公開された350 点の古典籍デジタル画像や一部翻刻・タグデータ等を含む国文研データセットの継続版として,700 点の日本古典籍デジタル資料へと拡大されて2016 年に公開されたものである.本稿では,ここに含まれる近世文学資料のデジタル版面画像を対象とした共同翻刻システムと,そのデータをIIIF 対応とすることによる活用方法について試行した成果の報告である.

11:50-12:15
人文系オープンデータとIIIFがもたらす意義・可能性・課題
永崎 研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

本発表は、人文系研究データの共有にあたって近年広まりつつあるオープンデータとIIIF という二つの潮流におけるそれぞれの意義・可能性・課題について、論点を整理しつつ今後を見通すことを目指すものである。オープンデータに関しては、デジタル画像資料の利用のしやすさや永続性という点ではメリットをもたらし得るが、異版の登場・乱立や一次配付元の活動の意義の説明に問題を生じる可能性があり、これを踏まえた評価方法を確立する必要がある。IIIF に関しては、一次配付元の存在感が高まる可能性がある一方で、責任も大きくなる。また、技術的課題もいくつか存在しており、解決に向けての国際的な協調も必要である。

12:15-13:15
お昼休み

13:15-14:15
企画セッション「構築したシステムのゆくえ(1)」
司会:山田太造(東京大学)

史資料と考古資料を利用していく環境
山田太造(東京大学)

発表者はこれまで,人文科学に関わる情報に関する検索および情報抽出などの研究に携わってきた.ここでは(1)小学生を対象とした埴輪などの考古資料に関する情報検索とその提示,(2)日本史研究者を対象とした史料情報・歴史情報の検索とその提示,に取り組んできた例をもとに,携わってきたプロジェクト自体および自分が行ってきた研究手法やそこでの結果を改めて振り返り,史資料を利活用するための方法について再考していく.

先祖由緒并一類附帳データベースの構築を振り返って
林正治(国立情報学研究所)

著者らの研究グループでは,これまで金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵加越能文庫内「先祖由緒并一類附帳」のデータベース化とそのデータベースを用いた研究支援を試みてきた.本発表では「先祖由緒并一類附帳」データベースの現状報告およびこれまでの研究過程の振り返りから歴史学研究(者)を支援するとはどういうことかを考える.

小さな研究室と,人文科学とコンピュータ
村川猛彦(和歌山大学)

これまで,次のことに関するシステムの設計・構築に携わってきた.(1)人間関係の検索が可能な僧侶データベース,(2)聖教書誌情報の全文検索,(3)バージョン管理を用いた漢訳仏典の翻刻支援(4)訓点資料を対象とした翻刻支援.実施にあたっては,学外研究者の提案・助言とともに,研究室に配属され実装を行い学会発表・卒業論文・修士論文へとまとめ上げる学生の協力が不可欠であった.本発表では人的側面や波及効果を交えつつ各システムを紹介する.

人文科学分野における研究・教育インフラストラクチャを目指したシステム開発
堤智昭(東京電機大学)

発表者はこれまでに人文科学分野において,研究支援や教育利用を目的とするいくつかのシステムを実装してきた.代表的なシステムとして,国立国語研究所が公開している形態素解析補助ツールWeb茶まめや,日本語史研究資料閲覧システムがある.本発表では,これらのシステムを構築・公開することで得られた知見や,システムの利用者から寄せられた意見を紹介し,研究支援・教育利用を目的としたシステムに重要な要件について論ずる.

14:15-14:25
休憩

14:25-15:25
企画セッション「構築したシステムのゆくえ(2)」
司会:山田太造(東京大学)

共通教育としてのコンピュータリテラシー科目における情報技術の利用
耒代誠仁(桜美林大学)

桜美林大学が初年次在学生を主な対象として提供しているコンピュータリテラシーⅠ/ⅠⅠの2科目について報告する.前者は町田キャンパスに拠点を置くリベラルアーツ学群,ビジネスマネジメント学群,健康福祉学群,芸術文化学群の4学群必修科目であり,年度ごとの開講数は50クラス超,履修者数は約2,200名の比較的規模の大きな授業である.専攻を問わず学生に必要とされるコンピュータ・ネットワークサービスの操作スキル,知的財産に関する知識などを扱い,専門科目における学習の礎を築く役割を担う.後者は専門科目において表計算の技術・知識が求められる学生向けの科目であり,年度ごとの開講数は40クラス超,履修者数は約1,200名である.報告者はこれらの科目をコーディネーターとして管理し,科目ごとのポリシー(一部共通シラバス)の作成,教員・ティーチングサポーター(計,約40名)へのFD,教材・教示法・学習環境の整備(特別な学習環境を必要とする履修者への対応を含む),授業評価アンケートの総括などを行っている.報告では,授業運営の紹介を行うと共に,いくつかの工夫と課題について述べる.

黒板前の教師の動きの視覚化とその効果
坂本將暢(愛知工業大学)

模擬授業後に,学生が自身の授業を客観的に振り返るために,録画された授業映像を配布する.振り返りのための視点の多くは,見た目で判断できるもので,教育学的な振り返りが十分とは言えなかった.そこで,黒板前の左右の動き,授業カテゴリー,5分毎の板書過程を載せたシートを配布した.その結果,黒板前の左右の動きと,教師としての成長との間に何らかの関係があることと,振り返りの対象が,自分自身中心から,生徒(役の学生)を含んだものに変化することが明らかになった.

大学の法学教育ゼミにおけるロールプレイを映像配信とコメントによって支援するシステムの活用
金子大輔(北星学園大学)

学部段階における法学教育の質的向上を目的に、ゼミへのロールプレイを導入した.その際,映像のストリーミングとコメントが可能なシステム「STICS」を活用した.本発表では,STICSや実践について概説し,学生へのアンケート調査の結果について報告する.その結果,多くの学生が映像やコメントを役に立つと捉えており,システムを肯定的に捉えていた.ただし,その有用性を認識しながらも,アクセスの頻度はそれほど多くはなかった.

CH研究会における教育への関与への期待 ―教育実践を見据えて―
吉岡亮衛(国立教育政策研究所)

CH研究会およびじんもんこんシンポジウムでこれまで発表された研究の中で,教育に関係する研究は多くない.その中で今回は教育に関するシステムについての研究発表を概観する.他方,教育工学分野の学会では,より多様な研究が見られるので,そちらの研究動向と対比しながらCH研究会の教育システム研究の特徴を明かにしたい.また,学校教育でのICT活用の現状を報告し,学校現場と研究との関係について私見を論じる.

15:25-15:35
休憩

15:35-16:25
企画セッション「構築したシステムのゆくえ(3)」
○パネルディスカッション

16:25-16:35
休憩

16:35-17:00
SAT大正蔵図像DBをめぐるコラボレーションの可能性
永崎 研宣(一般財団法人人文情報学研究所)

本発表では、SAT大正蔵図像DB(以下、図像DB)の開発、協働及び公開に関し、技術的側面を中心にして報告し、それがもたらしうる可能性について検討する。図像DBでは、PHP/PostgreSQLを用いつつ、フロントエンドにはjQuery/AnnotoriousというJavascriptのライブラリを用いたWebコラボレーションシステムを構築し、40数名の日本美術史研究者の協働作業による仏尊図像へのタグ付け作業を実施した。そして、このタグをIIIF形式に変換し、座標情報付きタグ情報としてCC BY-SAの下で公開した。さらに、IIIF Presentation APIとしてだけでなく、検索結果についても他のデータベースから利用できる独自の仕組みも提供したことにより、より多様な他システムとの連携が可能になった。

17:00-17:25 我々は世界をいかに把握しているのか ――ダークツーリズムの知識科学に対する貢献――
井出 明(追手門学院大学)

観光学における新しい旅の概念であるダークツーリズム(Dark Tourism)は、あえて戦争や災害をはじめとする地域の悲しみの記憶を観光対象としているため、旅人の価値概念や世界観を根底から覆す潜在的な可能性を有している。本報告では、ダークツーリズムという方法論に基づいて地域に接近する場合、当事者がこれまで有していた世界に対する認識がどのように変化するのかという点について、知識科学の視座を踏まえた考察を試みる。

17:25-17:35
クロージング

懇親会

18:00-

さかなやま 本山店 https://r.gnavi.co.jp/n635907/

会費は 4500円程度を予定しており、学生はディスカウントがあります。

下の書式で、亀田 kameda [at] cseas.kyoto-u.ac.jp までご連絡ください。 締切は2017年2月2日(木)です。

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第113回人文科学とコンピュータ研究会発表会

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ご所属:

2月4日(土)懇親会     参加  その他

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